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「アハハッ逃げたー。和真、もう少し遊びたかったのに」
残念そうながらも嬉しそうに手を上げている人体模型。それとは逆にダークなオーラを纏った和真。ニコッと笑っているが、目が笑ってない。だが、感情喰いである人体模型。口に出さなくても分かるのかさりげなくカチッと仮面に手を添える。
「喰っていい?」
「ダメだ。ってか、言うことあるだろ?」
「うーん。なんか変なことした?」
「このっ下等生物が……左手貸せ」
乱暴に左手を掴むと、スルッと手に嵌めていた黒い手袋を脱がす。咥えていたタバコを人体模型の手に押し付けた。
音はしないが焼け焦げた匂いが漂う。
普通の人なら痛がるのに、彼は何も言わない。
「ハッ痛みまで鈍感なのか? 笑える……」
嘲笑うかのような笑みを浮かべる。
警察ならそんなことはしないはず。
なのに、和真は――。
「それ、ギャクタイ? ねね、カズマは……いい人悪い人? ボクね、ずっと気になってた」
「まだまだ序の口だろうな。なんだ、痛いのか?」
一部の質問に和真は答えなかったが、何処か愉しそうな表情。焼け、焦げ付く痕に満足したのか、グッと強く握らせゆっくり手を開かせる。軽く叩きタバコをアスファルトに落とすと形が崩れるまで踏みつけた。
「さぁ、仕事だ。オフ会あるんだろ?」
「うん、和真イコー」
笑顔の人体模型と少し怪しげに笑う和真。先に人体模型を車に乗せるや和真はスマホを一瞬開く。
【解剖された男性の死体。右半分はなく】
――と不気味な文。新聞の記事か。待ち受け画面になっていた。
「……覚えてないならいい。思い出したらその時は――」
コンコンコンッと人体模型が窓ガラスを叩く音に和真は車のドアを開けるや「さっさと済ませて帰るぞ」と心にも無い薄い笑みを浮かべた。
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