追体験 とある青年の話

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「俺は入学したばかりでクラスに馴染めなくて一人ぼっちだった。たまたまクラスに悪ガキが居てな。好き勝手に暴れるわ、人をバカにするわで大変でさ。先生にまで手を出すし、誰も手に終えない。だから――」  スルッと女の子の手から男子高校の手が抜ける。ドサッと鈍い音と共に、校庭に居た学生達が悲鳴をあげた。女の子も居てもたってもいられず、手で顔を覆う。すると、突然場所が変わり、血塗れの男子高校の隣に同じように倒れていた。頭から血を流し、体のあらゆる箇所が痛い。口の中が鉄の味がする。 「俺もさぁ……死んだら分かってくれると思ったけど。そう上手くはいかなかった。イジメなんて認めてくれないし。誰一人、助けてもくれない。アハハ……バカだよな。クソクラエッ」  苦しそうに血を吐きながら、ニヤリと笑みを浮かべる男子高校生。女の子の手に手を添える。 「死ぬって怖くないか? 飛び降りてから後悔なんて遅い。アンタが本気で死にたいのなら、俺は止めやしない。だけど、死んだことで分かることもある。それは――君が一人じゃないってことだよ。誰のことだか分かるよね?」  その言葉を最後に、青年はピクリとも動かなくなった。意識が遠退く。息が苦しくなる。青年の後を追いかけるように女の子も――。
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