感情喰い

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感情喰い

「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん。目を覚まして――終わったよ」  優しく声をかけながら、男はパチンッと指を鳴らすと女の子がゆっくり目を覚ます。自分の腕や足、頭を確かめるように触れる。そして、最後に頬に手を当てた。 「あれ、なんで私泣いてるの?」  目には涙が溢れ、滴のように頬を伝っていた。どうやら無意識に泣いているらしく、慌てて手で擦る。だが、止まることのない涙。それはまるで、『死にたくない』と言っているかのようだった。  男は慰めようと左手ではなく、右手でゆっくり拭った。だが、普通の人なら柔らかく暖かいはずなのに、彼の右手は氷のように冷たくゴツゴツとしていた。左手は素手なのに、なぜか右手は隠すように服で手を隠している。不審に感じた女の子は男から離れ、後ずさる。  どうもおかしい。  男の体のバランスが――。 「アハハッバレちゃったか……仕方ないねぇ」  ゆっくり男は立ち上がると、わざと外灯の下に移動。 「やぁやぁ、化け物ですが……なにか? アハハハハハッ……ハァハァ……人間って面白いねぇ」  ケラケラと腹を押さえ、反り返る男。 「死にたいとか言ってるわりには『死ぬ勇気さえない』だったら、そんなこと言うなよ。バカじゃねーの?」  優しい口調が豹変したかのように口調が荒々しくなる。  ――怖い――
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