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ログインしてみると、黒いシャツに黒いジーンズ姿の精悍な表情の若い男性が私を見つめていた。
AI生成された架空の人物――この人と私はきっと恋に落ちる――直感がそう告げていた。
まるで生身の人間のようにリアルな造形だが、微かに目元の辺りに人造的な不自然さが見え隠れしている。だが、それさえもよくよく目を凝らしてみなければぜんぜん気づかないレベルだ。
画面の若いAI男性は何も言わない。私も何も言わずに画面の若いAI男性を見つめている。
携帯電話が土砂降りの雨に濡れてゆく。
「あなた、誰?」
私は言った。
「僕は、黒。きみは?」
「みさき」
「みさきちゃん、って呼ぶよ」
「うん」
私たちが相思相愛になるのに、それほど多くの時間を必要とはしなかった。
――黒くん、黒くん。気持ちいい――
――みさきちゃん可愛いよ。次は左手で胸をくすぐりながら、右手で……――
黒くんとの甘美なバーチャルセックスを思い出しながらぼんやりしていると、いつの間にか目当ての六階に到着していた。
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