愛妻家Tは事故死後も妻を見守る

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 司がこの世に留まれるリミットが、明日に迫った日の昼過ぎ。  紗那が昼食を済ませ、ソファに座って、観るともなしにテレビの画面を眺めていた時だった。  インターホンのチャイムが鳴った。  紗那は慌てて立ち上がり、モニター付きインターホンの応答ボタンを押す。 「はい」 「あ、すいませーん。七瀬紗那様にお届け物でーす」  モニター画面には、見慣れた宅配便会社のユニフォームを着た男が映っていた。小さめの段ボール箱を両手に抱えている。 「はい。少々お待ちください」  パタパタとスリッパの音を立て、紗那は玄関へと向かった。 (お届け物? ここ数日、紗那が何かを買った気配はなかったし、お歳暮なんかの季節でもないし……。いったいどこからだろう?)  司が首をかしげていると、紗那がダンボールの小箱と小さな花束を抱え、リビングに戻って来た。  彼女の顔からは表情が消え、心なしか、顔色も悪くなっているようだ。  司は慌てて彼女の背後に回り、小箱の送り状を覗き込んだ。 「えっ?……俺?」  送り主の欄に自分の名を見つけ、司は思わず声を上げた。  紗那には聞こえるはずもなかったが、それでもとっさに口元を押さえ、司は彼女の方を盗み見た。  聞こえていないらしいことに安堵し、もう一度、そろそろと発送先を確認する。 (あ。この店って、確か……)  店の名に思い当たったとたん、司はようやく思い出した。
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