思い出語り。

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 その日、僕は夢を見た。芽依菜と弥白、僕たち三人が幼馴染みの夢。  弥白と僕は小さい頃から芽依菜が好きで、芽依菜はそんな僕たちの内どちらかを贔屓することはなく、どちらのものにもならなかった。  それでも楽しく幸せな日々を過ごして、中学高校と同じ道を進んだ僕たちは、三人揃って大人になる。  初めて見たはずの大人の芽依菜は、いつも想像するせいか本当にずっと一緒だったように、見慣れた姿をしている気がした。  そしてある雨の日に、ちょうど今日みたいに弥白と僕が酔い潰れて、芽依菜は溜め息混じりに「自業自得だよ」なんて笑いながら、優しく水を差し出してくれるのだ。  彼女が生きていたとして恋が叶うわけでもなく、隣で酔い潰れる男に対して劣等感に苛まれることもある。けれどこの泣けるほど幸せな微睡みは、永遠に続けば良いとさえ思う。  それでも所詮は夢で、芽依菜に差し出された水を受け取ろうとして、僕はテーブルの空き瓶を倒してぼんやりと目を覚ます。 「……」  当たり前のようにそこに彼女は居なくて、今すぐ目を閉じて夢の世界に戻りたくなったけれど。弥白が隣でテーブルに突っ伏しながら彼女と僕の名前を寝言に呟くものだから、僕は少し笑って彼を叩き起こす。  そしていつの間にか雨の上がっていた、彼女の居ない現実へと道連れにした。
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