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赤黒い 呪い
《 この腕に 囲い込んで 閉じ込める 》
この《呪われた存在》は、泥濘の中にあるその身を清渓が阻み、身動きすら出来やしない。
水影は美しく、翠影にある白き花を水越しに見つめる。
泥濘の隙間から覗き、視界に入るのは光水。
その《黒き存在》たる目には、もはや光焰ですらある。
光焰の中心にある、眩燿たる花。
《 その花が 欲しくて 欲しくて 》
《 藻掻き 狂う 》
だが、あの女は言っていた。
『お前を愛す者などいない』
『だって、お前は“私”そのモノ。』
『お前のせいで、私はひとり。』
『なら、『私』と同じ『お前』もひとりきり』
『一生『お前』は『愛する者』を愛してはいけない』
『だって『お前』は『私』なのだから』
《 視界を塞ぎ 》
《 全ての自由を奪い 》
《 自分以外の存在を認めさせず 》
《 唯一の存在になりたいと願う 》
真紅のベルベットを思い出させる、薔薇のような女は言う。
『お前は『毒』だ』
『誰だって『毒』を喜ぶモノはいない』
光注ぐ水面の向こうに、白き花は美しく咲き誇る。
…嗚呼。
『愛』という名の奈落の底で、その白き花弁を渇望する。
『毒』を撒き散らしながら。
それは『夢』でしかない。
それでも。
泡沫の夢であろうとも。
求めずにはいられない。
その花弁が、この手に堕ちたその時。
……朽ちると……分かっているのに。
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