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やっと、見つけたとき、村西は、空き教室にいた。
「村西......!」
「うるさい!」
泣いてるのを見られるのがよほど、嫌だったのか机に突っ伏すようにして涙を堪えていた。
「うるさい」と言われてしまっては、話しかけることもできない。
しばらく地獄のような沈黙が続いた。
「ねぇ、川口って、私が当番のとき一緒に黒板消してくれるじゃん?なんで、黒板が黒色じゃなくて、緑色か分かる?」
さっきの言葉に責任を感じてか、沈黙を破ったのは村西の方だった。
突然のクイズ?意表を突いたような言葉に思わず黙りこくってしまった。
「私もね、最近まで知らなくて、ふと気になってスマホで調べたの」
俺は相変わらず黙ったままだったが、彼女は気にせず続けた。
「昔ってね、黒色の染料って手に入りにくかったんだって。だから、緑色の染料を代わりに使ったんだって」
村西は続けて言った。
「こんな私でも代わりくらいにはなるかなって思ったんだよ。美羽があいつと上手くいかなければ、私でも代わりになるかなって。馬鹿だよね。そんなわけないのに。美羽が私のこと好きになってくれる訳ないのに」
ボロボロと涙を流しながら村西は話し続けた。
「私、よく腹黒いって言われるけど、自分のどこが悪いのか分かんないの。きっと、そんなんだから、美羽にも嫌われちゃったんだよね」
本当は全部わかっていた。村西の恋を応援しときながら、叶うわけないって分かっていた。
村西がクラスメイトから良く思われていないのを気にしてないわけないのに、平気だっておもっている自分もいた。村西は、クラスメイトからどう思われていようと一途に、神田のことが、好きだったはずなのに、俺だけが俯瞰して物事を見られる立場だったのに、俺は何もできなかった。村西の強さに甘えて何もできなかった。本当は辛かったのを、それを隠していたのを、誰よりも分かっていたはずだったのに。
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