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「で、例の彼とはどうなってるのよー!」
お弁当の蓋を開く前に、村西が先に口を開いた。神田の恋愛事情が、よほど気になるのか突拍子もなく尋ねてきた。恐らく、本人にとっては、探ってるつもりなんだろうけど、全くさりげなさがない。
「えぇ、いきなり。どうって、どうもしないよ。でもね、彼女いないってこの前本人から聞いたんだ......っそれだけ!」
神田も神田で、隠してるつもりなんだろうけど、目にハートが宿っている。そうか、上手くいっているようで何よりだ。
例の彼というのは、男子バレー部1かっこいいと言われる澤野陸のことだろう。神田美羽は、その彼のことが好きらしく、彼女の話を聞く限り、彼もまた彼女のことが好きなのではないかと俺たち3人は思っている。
村西はそんな恋する乙女の表情の神田を見て、何となく不満気だ。お弁当の唐揚げを口いっぱいに頬張ったあと、咀嚼して勢いよく飲み込んだ。
「上手くいくといいね」
それだけ言うので精一杯らしく、ツインテールのゴムをギュッと締め直すと、席を立って「私委員会の仕事あるから!」と行ってしまった。
恋する女子二人に板挟みにされるのは、何とも言い難い居心地の悪さがあるが、これが俺たちの日常だった。
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