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部屋に置かれた鏡の前に立ち、そこに映る自分の姿を眺める。
手入れされていないブラウンの髪、頬には少しそばかすがあり、着古した水色のワンピースを着ている娘が映っていた。痩せているせいか暗い雰囲気が漂っていた。
前世の私も美人ではなかったと思う。
いつも黒髪をひとつに束ねて、眼鏡をかけていた。
こちらでは、眼鏡をかけなくても見えることは嬉しい。
記憶を思い出してからは、前世の自分の姿と、今の自分の姿を、咄嗟に理解するのが難しくて、違和感を感じてしまう。
毎日会社と自宅の往復のみ。
残業で疲れていて。夜中ぼーっと帰っていたら、強い衝撃があった事までは覚えている。
ブレーキ音が聞こえたような気がする。
あの時、私は、車にはねられたのね。
そして…死んでしまったのね。
赤ちゃんの頃に、前世の記憶が戻らなくて良かったのかもしれない。
記憶を思い出す前の私は、おしとやかだったと思う。
多分週に1度。門の所にパンの入ったカゴが届けられている。毎日3食たべるには足りないけれど、少しづつ食べて過ごしてきた。
あのパンは一体誰が届けてくれているのだろう。
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