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柔らかな土に、靴裏が埋まる。
一歩、また一歩と足を踏み出すたびに、踏みしめた地面がきゅっと音を立てる。湿り気を帯びた土に少しだけ足を取られながら、それでも僕は山頂を目指し歩き続ける。夜が訪れる前に。
頭皮を伝って額に流れた汗を、僕は手の甲で拭った。昼間の熱がこもっているような暑さだが、木陰のある山道は街中を歩くよりは幾分ましに思えた。
僕は登ってきた細い道を振り返る。太陽の姿は木々に隠れて見えない。だけど弱まっていく光で、音もなく沈んでいく太陽がすぐそこにあるような気がした。
今夜、この世界が終わる。今日は世界が終わる最後の日だ。
20✕✕年7月19日、黒い霧が宇宙から地表へ流れ込み、地球上のありとあらゆる生命が息絶える。
この「宣言」に似た予報が公にされたのは、もう3年も前のことだ。
最初は誰も本気になんかしなかった。フェイクニュースとして大げさに取り上げられるなんてことすらなく、だけどどうしてか、静かに夜の海のように少しずつ人々の足を濡らした。気付いた頃には、人類は膝下まで水に浸かっていた。
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