やまない雨はない

1/3
前へ
/3ページ
次へ
 目の前が真っ暗になるとはこういうことを言うのだろう。僕の手には解雇通知書が握られている。何か悪い事をしたのか?と問われれば、上司の命令で受領していた金銭データを改ざんしたので、言い逃れは全く出来ない。だけどこの仕打ちはあんまりではないだろうか。僕は今までこの組織に忠誠を尽くしてきた。どんな命令も嫌な顔一つしないで実行してきた。今回の一件だってそうだ。それがこの結果だ。僕の人生いつもこうだ。大切な時に必ず何がしかの邪魔が入ってボロボロになる。どうしてこうなった。どこで道を間違えた。降りしきる雨の中、僕は一人立ち尽くしてただ泣いた。  その時スマホが鳴った。画面には僕の彼女の名前がある。同期であり、よき同僚であった彼女であったが、今回の件を知ったのだろう。その声はいささか強張っていた。僕は包み隠さず全てを語った。黙って聞いていた彼女であったが、僕が話し終えるとこう言った。 「別れましょ」  なんとなくそう言われると直感していた僕はその言葉に驚きもせず、その提案に乗り、電話を切った。こうなってしまったからには僕になんて用はないのだろう。首になって将来のお先真っ暗になった男になんて価値はないのだ。涙はいつの間にか枯れ果てていた。僕は虚無感に苛まれながら夜の街を背にした。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加