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裸のままシーツに包まる私に、彼は下着を履いてから立ち上がり紅茶を淹れてくれた。
「ここに置くよ。」
「ありがとう。」
「こっちも雨が凄かったんだよ。今は良い天気だけどね。あ、そうだ、こんなことした後になってあれだけど、まだ名前を言ってなかったね。」
「ちょっと待って!」
私の言葉に彼はキョトンとした。
何故だかは分からない。分からないけど、私は彼の名前を聞いてはいけない気がする。この街が何という場所なのかも私は未だに知らない。けど、それを知ってはいけない気がする。
「どうしたの?」
「あの…凄い変な質問していい?」
彼はキョトンとした表情のまま頷いた。
「私は日本という国から来たの。…ここも日本?」
彼が首を傾げてからゆっくりと首を横に振ったのを見て私は確信した。
…異世界なんだ、と。
「…ニホン。ここは…」
「待って!言わないで!」
私は何故だか、この異世界のことを知ってしまえば全てが無くなってしまうような気がして聞くのが怖かった。
彼は不安そうな私の表情を見ると、ベッドの上でシーツに包まって座る私の横に座り、優しく微笑んで私の頭を撫でた。
「不思議な子だ。だけど、僕には君が必要な気がする。」
「…私、このままここに居てもいいかな?」
「いや、君には君の世界がある。きっと僕と君は雨上がりの時にだけ会える運命なのかもしれない。今はその運命に逆らってはいけない気がする。」
私は根拠の無い彼の言葉に妙に納得して頷いた。
「僕の世界からはきっとあの岩の水溜まりからしか戻れないんじゃないか。」
「…もし、水溜まりが無くなってしまったらどうなるのかな?」
「ん〜、それは僕には分からない。でも、今日は一旦帰った方がいい。きっと君の世界と僕の世界は天気はリンクしているように思う。また雨が降ったら会いに来て。」
彼はそう言って優しく唇を重ねた。
「さぁ、また水溜まりの所に行こう。蒸発してしまう前に。」
私は彼と一緒に一枚岩まで行くと、水溜まりを覗き込み意識がフッと遠退いた。
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