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それから私は、雨が降るたびに、彼と愛を育んだ。
彼の名前や彼の住む街は分からない。分からなくても、私の目の前に彼は居る。彼の唇も、彼の息遣いも、彼の肌の温もりも、そして彼の優しい微笑みも、間違いなく私を癒してくれている。これ以上望むものなど無い。私はそう思ってこの1年を過ごしてきた。
そして、現在。
彼は腕の中で私の頭を優しく撫でながら頬にキスをした。
「僕たちが出会ってからもうじき1年が経つよね。」
「うん、もう1年なんだ。不思議な出会いだよね。」
「あぁ、きっと僕たちだけだよ、こんな奇跡的な関係は。」
「…ねぇ。」
私は言葉を詰まらせた。彼は「どうしたの?」と耳元で囁きながら頭を優しく撫でた。
「私の中で覚悟が出来た。」
「…覚悟?」
「私、あなたの名前とかこの街のこととか、この世界のことがもっともっと知りたいの。…それは欲張り?」
「まさか、欲張りなんてことあるものか。でも、君も感じたんだろ?もし、今以上のこもを知ってしまったら全てが終わってしまうんじゃないかって…。」
「…うん、でも、私はずっとあなたと居たい。雨上がりだけしか会えないのはやっぱり寂しいのよ。」
私は彼の胸にぎゅっと頰を擦り付けた。泣きそうな顔を見せたくなかった。でも、目から横に流れた涙が彼の肌に触れると、彼は察したのか私の顔を上げさせようとはせず、ただただぎゅっと私を抱きしめた。
「僕は君を愛してる。」
「私もよ。」
「僕が君の住む日本という国を知らないということは、きっと住む世界が違うんだろうな。でも何故か言葉は同じで通じるんだ。本当に不思議な出会いだな。」
「うん、本当に。」
「僕の名前…教えてもいいかな?そして、君の名前も知りたい。」
「全て教えて、私も全てを教えるから。」
「なら、同時に言おうか。」
私は顔を上げて彼の目をじっと見た。彼の微笑みを合図に2人は同時に口を開いた。
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