雨上がりの恋人

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「そろそろだと思った。待ってたよ。」 「私の世界は土砂降りだったから。」 「ハハハ、それはこっちも一緒だ。天気だけは共通なはずだろ。今日はどれくらい居れそうだ?」 「うーん、経験値から言うと半日は大丈夫かな。こっちと同じで今はすっかり晴れちゃってるから。」 「そうか、半日か。」 「そ!だから…。」 私は彼に積極的にキスをした。 数時間後、私は彼のベッドで彼の腕の中にいた。この温もりを感じられるのもあと数時間。その後はいつ会えるかはまた天気次第。いつ会えるかわからない、そのどうにも抗えない運命が私たちの恋を更に加速させていく。 彼は腕の中で私の頭を優しく撫でながら頬にキスをした。 「僕たちが出会ってからもうじき1年が経つよね。」 「うん、もう1年なんだ。不思議な出会いだよね。」 「あぁ、きっと僕たちだけだよ、こんな奇跡的な関係は。」 ー それは1年前に遡る。 私は昔から雨が嫌いではなかった。勿論晴れの方が気分はいい。小学生の頃は遠足や旅行なんかの日が朝から雨だと空に殺意すら感じていた。 でも、不思議と雨が屋根や地面を叩きつける音は私の心を穏やかにしてくれる時がある。中学生あたりから読書が趣味の私は、雨の日は決まって雨音をBGMにお気に入りのライトノベルを読むのが好きだった。 大学生になった頃には、お出かけや旅行が雨でも、雨なりの楽しみ方を考えることがまた好きだった。 社会人になった今は、雨上がりの時間がまた新たな楽しみになった。雨に濡れたコンクリートの独特な香りと、陽光に照らされて静かに蒸発していく水溜まり。少し神秘的な雰囲気を私は感じていた。 そんなある日、私は不思議な水溜まりを見つけた。それは、私の家の裏側にある小高い丘にあった。放置された木々で鬱蒼としていた丘には古びた神社があり、見た目の不気味さから誰も近付こうとはしなかった。 あの日は、何かに導かれたとしか思えなかった。土砂降りの翌日の雨上がり、普段は絶対に行かないその丘に自然に足が向いていた。そして、古びた神社の鳥居の目の前にその水溜まりがあったのだ。
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