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―― 「すべては私の言葉足らずが原因だろう。本当にすまない」  今のラーファは、普段の凛々しい辺境伯の姿とはかけ離れていた。だが、思わず抱きしめたくなるくらいイズにはそれが愛おしかった。 「いえ、わたくしの方こそ、ただただ内に溜め込むだけで……。そもそもこの婚姻は偽装だったのではないかと、浅はかな妄想で勝手に不安になっていました。ごめんなさい」  イズは遠慮がちにラーファの背に腕をまわした。服越しに伝わってくる体温と鼓動が心地良い。 「偽装など、そんな器用なことは私にはできないさ。耳と尻尾に出てしまうからな。長い間、不安にさせて悪かった」  ラーファの手が、イズの背中をゆっくりとさする。 「ラーファ様」  イズは衝動的に、ラーファにくちづけた。一瞬触れるだけの短いキス。経験のないイズにとっては大それた行為だった。 「触れて、くださいませんか」  イズは吐息のような声でお願いする。うつむかずにいるのが精いっぱいだった。目を合わせてはとても言えない。 「それともこんな、はしたないわたくしはお嫌いですか?」
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