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(こんなにつらいと思うほど、わたくしは、いつの間にかラーファ様のことをお慕いしていたのね……)
イズは肩を震わせ、子供のように泣きじゃくりながらも、どこか冷静に自分の気持ちを顧みる。
行き遅れの自分に舞い降りた幸運。犬耳と尻尾がかわいらしい旦那様。髪を撫で、唇を重ねた初めての人。
「イズ!」
鼓膜が痛くなるほど大きな音を立てて、寝室の扉が開け放たれた。
イズはのろのろと身体を起こし、乱れた髪を手で押さえる。
ずっとラーファがここに戻って来ることを待ち望んでいたが、今のイズは少しも嬉しくなかった。
「無礼を承知で申しあげます。エスト辺境伯ラーファ・ダルク・エスト様、どうかわたくしと……離縁、してください」
たかが貴族令嬢風情が、辺境伯である夫に離婚を切り出すなどありえないことだとわかっている。
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