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「侍女だけでなく、従者とも……その、屋外でいかがわしいことをするなんて、あんまりです……!」
それでもイズには、言葉も涙も止められなかった。
すべてを飲み込み、偽装結婚を続けられるほど、イズは強かではなかった。
「誤解だ、イズ!」
ラーファは声を荒げ、イズの身体を強く抱きすくめた。
「やめてください! わたくしに触れるのもお嫌でしょう! あの夜も、書斎の時だって……」
イズは両手を突っ張って逃れようとするが、ラーファの身体はびくともしない。
「二十日近く放っておいたのは悪いと思っている」
「二十一日です」
「……とにかく、落ち度は私にある。だが弁解をさせてくれ」
ラーファは偽りのない真摯な瞳でイズを見つめた。真剣さを裏付けるように犬耳もピンと立っている。
耳や尻尾に感情が出てしまうため、獣人は一様に嘘が下手だ。
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