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「いや、あの、人間と獣人とで、もしかしたら何か違いがあるのではないかと不安になり、文献を取り寄せてだな。異種族間の行為について取り扱ったものがなかなか見つからなくて、手元に届くまでこんなにも時間がかかるとは思っていなかった。本来であれば初夜の前に学ぶべきことだったのだが、勢いでどうにかなるだろうという過信というか慢心があって――」
ラーファは口元を隠したまま、早口で喋りまくる。手で覆われているせいで見づらいが、頬が赤くなっていた。耳は自信なくぺたんと伏せられ、尻尾も力なく垂れている。
「手も怪我をしたわけではなく――まぁ、怪我と言えば怪我か。どこまで爪にヤスリをかければいいかわからず、血が出てしまって。爪が黒いせいで血管がよく見えなかったんだ。手引書には爪を短くするだけでなく、手袋をつけることも推奨されていたが、私個人としては布越しよりも直接触れたくて」
イズはラーファの手を口元から引きはがした。白い毛皮に覆われた指の先には、先の丸まった円柱状の黒い爪がちょこんと生えている。以前の、三分の二から半分程度の長さしかないように見えた。
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