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「あ……んんっ、察しが悪くて、すまない」
ラーファもつられたように顔を赤くし、それをごまかすためなのか、わざとらしく咳払いをする。
「先ほど、従者になさっていたことは……?」
これも自分の誤解なのだろうなと思いつつ、イズは聞かずにいられなかった。どんな経緯があったら、「夫が屋外で従者の胸をまさぐる」という状況に行きつくのか、イズには想像もつかない。
「あの場にいた二人は、配偶者が獣人でな。色々と相談に乗ってもらっていたんだ。あんなことをしていたのは爪の当たり具合を確かめるためで、その実験台として彼が名乗りをあげてくれた。妻以外の女性に触れるわけにはいかないしな」
「だからって、あんな所であんな風に……」
「手引書を読んでいることを知られたかと思って恥ずかしくなり、気が動転していた。苦しい言い訳に聞こえるかもしれない。だがあの夜からずっと、どうしていいか、わからなかったんだ」
ラーファは額を押さえるように前髪をかき上げた。眉尻は下がり、視線は落ち着きなくさまよっている。
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