めでたしめでたし

2/3
前へ
/80ページ
次へ
「初めてのくせになんで分かんだよお前が嘘なんじゃねぇの」 「経験あるように見えんのかよ」  ムッとして指先に歯を立ててやる。  甘井呂の手がピクッと緊張したが、そのまま指が口の中に入ってきて頬を引っ張ってきた。  強制的に喋れなくなった諏訪は、甘井呂の好きにされている気分になる。それは心地いいのだが、少し悔しくもあった。  柔らかい部分に触れられると、Commandを受けた時のように体が熱くなってきて。  モゾモゾと体を捩る諏訪を見る甘井呂の口端が上がる。 「……まぁ可愛いからなんでもいいか」 「誤魔化すな……っん」  指が口から出ていったかと思うと、また軽く唇が重なった。  甘井呂は静かになった諏訪の髪を撫でて、落ち着いた声で口を開く。 「白状すると、俺がお前に『Subなのは二人だけの秘密にしよう』って言ったのは親切心からじゃねぇ」 「へ?」 「お前を独占したかっただけだ。秘密の共有をして、縛りたかった」  ただひたすら、甘井呂の優しさだと思っていた諏訪は目を瞬かせる。  そういえば甘井呂は、初めて諏訪とPlayしてから他の人とはしていないと言った。 「もしかして、知り合ってすぐから俺のことが好きだった? なんて……」 「そうだよ」 「お、俺なんもしてないのに」  謙遜でもなんでもなく、諏訪は不思議だった。  Playをするようになり仲良くなってからならともかく、出会ってすぐの頃なんてずっと甘井呂に怒られていた記憶しかない。 「Domを全く怖がんねぇとことか、Play中にとにかく素直でかわいいとことか。バカみてぇに真っ直ぐすぎてほっとけないとことか。お前の全部に惹かれた」  甘井呂の言葉に迷いはなく、褒められているのか貶されているのかわからない言葉にさえときめいてしまう。  慈しむような熱い瞳が、諏訪を捉えて離さない。 「絶対に俺のもんにしたいって、思ったんだ」 「……っ」  大好きな甘く深い声と共に頬に口付けられて、諏訪はギュッと甘井呂のワイシャツを握った。  全身を巡る血の流れが早くなりすぎて、頭をぼやけさせる。何も考えられなくなりそうだった。 「俺は、好きとかは初めよく分かんなかったけど……」  贈られた言葉にきちんと報いるために、心の形をなんとか言葉にしようと頭を働かせる。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加