ふわふわ

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 やはり立ち止まってくれた甘井呂は、「なんだ」と目だけで問いかけてくる。  Domは威圧的だが面倒見が良いタイプが多いから、甘井呂もそうなんだろう。  肘を掴んだことに理由は無かったが、諏訪はなんとか場を繋ごうと必死で口を動かした。 「あの、ほら! せっかくだから、部活見学してけよ!」 「離せ」 「はい」  部活の話題を出すと外見通り冷たい甘井呂の言葉。諏訪は何故かそれ以上は何も言えなくなって、手を下ろした。 「素直な良い子だな」  甘井呂が目を細めただけで、胸がひとつ、大きく鳴る。  どう考えてもおかしい。  だが思考が停止してしまっている諏訪は、自分の体や心の反応を無視する方法しか思いつかなかった。 「い、言っとくけど、俺のが先輩だからな!?」 「あんた、ちゃんと病院いけよ」  必死の虚勢をスルーされて肩透かしをくらう。  流石に初対面の一年生に心配されるほど体調が悪いとは思わず、諏訪はへらりと頭を掻いた。 「しつこい風邪だけど、時間ないんだよなー」 「放課後行けよ」 「部活を休むって選択肢はない!」  諏訪は手を突き出してきっぱりと言い切ったものの、DomはNormalにも影響を及ぼすのだろうか。「行け」と言われたら「行かなきゃならない」と胸がざわめく。  頑なに譲らない諏訪を見て、甘井呂はハーッと大きくため息をついた。  全く理解できないと呆れの滲む顔に書いてある。 「体育会系、意味わかんねぇ。忠告はしたからな」  大股でさっさと立ち去っていく後ろ姿を眺めて、他人に冷たくしきれない優しい奴なんだとぼんやり思う。 (……病院行ったら、褒めてくれんのかな……)  頭に触りながら、手の温もりを思い出す。  あの手に抱きしめられたら、どんなに気持ちがいいんだろう。 「って、何考えてんだ俺はもー!! いい加減にしろっ」  胸の燻りを発散させるように叫び、両頬をバチンッと挟む。  ジンッとした痛みのおかげで頭がはっきりする。  気合いを入れ直せたと満足して、部活に戻ろうと方向転換すると。  丁度呼びにきたらしい後輩が驚いて固まっていた。
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