Glare

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「頼むからお前も、まだ誰にも言わないでくれよ」  不安で揺れる諏訪の瞳を受け止めた甘井呂は、静かに長く息を吐いた。抱きしめてくれる腕に力がこもる。 「……部活は土日もあるのか」 「へぁ?」  全く関係ない話題に急に飛んで、諏訪は気の抜けた声を出してしまう。質問してきた甘井呂の表情は変わらず真剣そのもので、諏訪は体を預けたまま返事をすることにした。 「ある。だいたい午前と午後が交互に。練習試合の時もあるし……どうしたんだ? 入る気になっ」 「ならない。週一でPlayするぞ」 「誰が?」 「俺とあんた以外にいるのか」  諏訪はフリーズした。  部活への勧誘が冷たくスルーされたことなど、気にならない提案だ。 「それは……申し訳ないような……」  口では遠慮しながらも、Playを知ってしまった胸は高鳴るのを抑えることはできない。  甘井呂とあの満ち足りた時間を過ごすことが定期的に出来るとしたら、なんて幸せだろう。 「俺は決まった相手が出来て楽。あんたはひとまず病院や薬に頼らないで生活ができる」  諏訪が躊躇したため、甘井呂は自分の提案のメリットを教えてくれる。お互いにいいことしかないのだと、諏訪の頬を撫でてきた。 「DomとSubは、両方いないと成り立たねぇから」 「甘井呂って優しいよな」 「本当に優しいやつは病院に引きずってくんじゃねぇの」  心の底から思ってしみじみと言ったのに、甘井呂は急にそっぽを向いて素っ気なく返してくる。  加えて体を離されてしまって喪失感を覚えた諏訪だったが、顔を背けた甘井呂の耳が赤くなっているのが目に入った。 「さては照れてるな?」 「んなわけねぇだろ」  心のままにニヤついて甘井呂の頬を突っつけば、パシンと軽く払われてしまう。  ひりつく手を引っ込めた諏訪は、へらりと笑った。 「さんきゅ、甘井呂」  甘井呂が、 「なんでもいいからとにかく病院に行ってこい」  などと言わず、どうしたらいいか考えてくれたのが嬉しかった。  諏訪の気持ちに共感して、受け止めてくれた気がした。  甘井呂は顔は背けたまま、ぽふんと諏訪の頭に手を置く。 「しばらく、あんたと俺だけの秘密だ」  秘密という甘美な響きに、諏訪は心が舞い上がるのを実感する。 (DomとSubって、みんなこうなのかな)  大きな手に撫でられて目を細めながら、部活のことを一時的に忘れていた諏訪であった。
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