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影響が有ったのは諏訪だけだったが、Glareは関係ない人を巻き込む可能性があるのだから。
諏訪は座り込んだままでは格好がつかないと思いつつも、後輩を説教する時の顔を作って二人を見上げる。
「お前ら、人多いんだから気をつけろよ」
「悪い」
「すんません」
指先を震わせながら懸命に頭を上げている諏訪に、二人はしおらしく謝った。
彼ららしくない態度だが、反省を感じられて諏訪は頷く。
すると甘井呂が右腕を握ってきて、それを見た唐渡が負けじと左腕を掴んできた。
長身の二人に同時に引き上げられた諏訪は、宇宙人にでもなった気持ちだ。
「やべぇ腰抜けた」
立ち上がらせて貰ったものの、足元がおぼつかない。
諏訪は苦笑いし、甘井呂に体を寄せた。
「甘井呂、ちょい肩貸して」
「なんでそっちなんすか」
「え? え、と……」
すかさず身を乗り出して手に力を込める唐渡に対し、諏訪は言葉に詰まる。
何も考えず、何の違和感もなく甘井呂を頼ったからだ。
(なんでって……だって……)
答えを出せないでいると、甘井呂が諏訪の腰に腕を回して抱き寄せてきた。
「俺と映画に行くからだよ離せ」
「そ、そうそう! 映画観るんだわ」
全くそんな予定はなかったわけだが、甘井呂の言葉に乗っかった諏訪はこくこくと忙しなく頷く。
それでも唐渡は納得していない空気のままだった。
「……Glareのケアなら俺でもできますけど」
「Normalにケアは要らねぇよ。Dom二人のGlareを至近距離で浴びせちまったから、少し休ませてから行くだけだ。時間決まってんだから離せ」
甘井呂は珍しく余裕のない早口で唐渡に言葉を投げつける。唐渡は諏訪を掴んでいるのとは反対の拳を強く握りしめていた。
いつまた二人が怒り出してもおかしくない雰囲気を壊そうと、諏訪は不自然なまでに明るい声を出す。
「気ぃ使ってくれてサンキュー唐渡! また明日な?」
「あー……っ」
ずっと腕を掴んでいる手に諏訪が触れると、唐渡は話は終わりなのだと察したらしい。
ようやく諏訪の腕を離した唐渡は、不満をぶつけるように自分の癖っ毛の頭をガシャガシャとかき混ぜた。
「……面白かったら教えてください」
「おう! 他の奴らによろしくー!」
唐渡は諏訪に拗ねた顔を見せ、甘井呂を睨み付けてから二人に背を向けた。
諏訪は背中に嫌な汗を感じながらもにこやかに手を振って見送る。
甘井呂は諏訪を抱きしめる腕を強め、舌を出していた。
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