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この関係は
赤いシーツのベッドに足を組んで座る甘井呂は、気高く美しい王様のようだ。
諏訪は裸足の足元に跪き、白く長い指先の動きを食い入るように見つめる。
「それ、Give」
Commandの乗った言葉は体を昂らせる。
すぐさま諏訪は立ち上がった。
ベッドサイドの丸テーブルに「ご自由にどうぞ」のカードと共に置いてあった、白い手のひらサイズの箱を持ち上げる。
甘井呂に差し出せば喉を指先でくすぐられ、次は箱を開けろと促された。
再び膝をついた諏訪は恍惚とした表情になりながら、箱を開ける。食欲のそそる甘い香りがふわりと広がり、丸いチョコレートが四つ姿を現した。
白い指がそのうちの一つを摘み、諏訪の口元に寄せてくる。
「Eat」
手を汚さないようにと遠慮がちに開いた諏訪の口に、ついっと無遠慮にチョコレートが差し込まれる。指に歯が当たってしまって慌てて大きく口を開くと、舌の上に甘みが乗って口元が緩む。
甘井呂はチョコレートを持っていた指先を諏訪の唾液ごと舐め取り、チョコレートをモグモグと食べる様子を見つめる。諏訪は見られるのが落ち着かずに目線を逸らすが、すぐに顎を掴まれた。
熱い瞳から逃げられないまま、諏訪は口の中のものをごくりと飲み込む。
「Good boy」
目を細めた甘井呂が、優しく頭を撫でてくれる。受け止めきれないほどの幸福感に包まれて、諏訪は甘井呂の膝に頬を乗せて擦り寄った。
「諏訪、Command受けるの上手になったな。偉いぞ」
重ねて柔らかい声をかけられて、諏訪は天にも昇る気持ちだ。もっともっとと、心が欲張る。
だが時は残酷だ。
「そろそろ時間か」
「もう? そっかー」
壁に掛かっている時計を確認した甘井呂が静かに告げてくる。Playルームを使っている限りは、どうしてもずっとのんびりはできない。
諏訪は離れ難すぎて、毎回「この後、家に来ないか」と甘井呂に言いたくなってしまうほどだった。
しかし家族に隠している以上そういうわけにもいかない。いや隠していなくても、いつ誰が帰ってくるか分からない家では落ち着かないだろう。
いつも通り諦めた諏訪は、じっと甘井呂を見上げた。
「……あの、さ」
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