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(でも、こんなやり方……)
「……諏訪」
「どうしよう……」
「諏訪!」
突如、後ろから肩を掴まれて揺さぶられた。
よろよろと歩いていた体が振り返ると同時に傾き、ボスンッと目の前の人物に抱き止められる。
「……林」
「お前、また真っ青だぞ!」
小学生からの見慣れた顔が必死の形相をしていて、諏訪は更に力が抜けた。
サッカー部部長の林は戸惑いながらもしっかりと諏訪を支え、廊下の端へと引きずるように移動してくれる。
どうやら、走っている諏訪のただならぬ様子をみて追いかけて来てくれたらしい。
肩で息をしている林にしがみついて、諏訪はへにゃりと笑った。
「はは、汗くさ……」
「人のこと言えんのかお前!」
「いだっ!」
ぶすくれた声を出した林にバシンっと背中を叩かれて体を起こす。もう少し優しくしてくれないものかと思いはするが、諏訪はある意味元気になった。
座り込んだまま、伺うようにいつもと変わらない雰囲気の林を見る。
「林も、聞いたのか?」
「……お前がSubかもってやつか。俺のとこに質問が殺到したから逃げてたら、お前を見つけたんだ」
「悪ぃ」
項垂れる諏訪に首を振った林は、口元に手を当てて声を潜めた。
「中学に入る前の診断書ではNormalだったの、この目でしっかり見たことは伝えたんだが……良かったか?」
「おう、嘘じゃねぇもん」
「そうだよな。そろそろ授業始まるけど、教室に戻るか? それとも保健室?」
林は腕時計の文字盤を見て立ち上がる。すぐに歩み出しそうな足を、諏訪はがっしりと掴んだ。
「どうした?」
「結局どっちか、聞かねぇの?」
通常DomかSubかNormalかという話題は、診断結果が出る小学生から中学生に変わるくらいの年で落ち着く。
高校では仲良くなるにつれて自然と分かるし、言わなくても抑制剤などを持っていたら気がつくのだ。
だが諏訪は「ずっと隠していた」と思われているからややこしい。
他人の秘密は、暴きたくなるものだ。
話したく、なるものだ。
甘井呂が意図的でなくとも口を滑らせた可能性は充分ある。
林だって、本当は気になって仕方ないのではないか。
そう思うと、全て曝け出してしまいたい。
縋るような目で見上げていると、林は指で頬をかきながらしばらく唸る。
彼の中で葛藤があることが見て取れた。
「聞いといた方が良いなら聞く」
ようやく導き出した言葉は、「困ったことがあれば助ける」と言ってくれている。
諏訪は安堵して立ち上がった。
「まだ医者行ってないんだよな」
「なんだそりゃ」
笑って小突いてくる林と教室に戻ったのは、授業始まりのチャイムが終わるギリギリだった。
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