親友

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親友

「ちゃんと薬とか貰えて良かったな」 「おー……でも今日はもうすでに疲れてる……」 「雨で昼練休みなんだ。ゆっくりしろよ」    ぐったりと机に突っ伏す諏訪の肩を、正面に座った林は大きなおにぎりに齧り付きながらポンと叩く。  林の言う通り、窓の外はガラスを叩きつけるほどの大雨だ。放課後の部活も、筋トレや階段登り降りになりそうである。  今日は甘井呂との約束通り、諏訪は病院へ行ってきた。  予想通り「Subである」と診断を受けて、午前の授業が終わるとほぼ同時に登校してきたところだった。 「親御さん、なんて?」 「分からんこと多すぎだから勉強するって張り切ってた」  初めは半信半疑だった両親は、医師から渡された診断書を見て戸惑っていた。  でも、「だからこそ真剣に学ぼう」と、齧り付くように渡された冊子を読んでくれる様子を見て、諏訪はほっとしたと林に話す。  林は何度も頷いた。 「改めて言われると知らんことばっかだよな。抑制剤の飲み方とかPlayの回数とか」 「そうそう。病院の先生も、抑制剤は合う合わないがあるとか、やっぱりPlayが一番いいとか言ってた」 「ならお前は、甘井呂が居るから大丈夫だな」 「なんで知ってるんだよ」 「なんで気づかないと思うんだ」  急に出てきた名前に諏訪が動揺すると、林はさも当然のように肩をすくめた。  甘井呂とのことは言ってなかったはずだが、付き合いが長いせいかバレバレだったようだ。  赤くなった頬を隠すために頬杖をついた諏訪は、逃げるように話題を変えた。 「佐藤たちはしばらく自宅謹慎……三年なのにやっちまったよな」  今日、登校した時に担任の先生が伝えてくれた。  色んな生徒に話を聞いた結果、佐藤とPlayを強要しようとしたDomの生徒の二人が謹慎。  他の野次馬たちやその場で見て見ぬ振りをしていた生徒たちはお咎めなし。  結果に全く納得していないと豪語する林は、憮然とした表情で腕を組んだ。 「退学にならなかっただけマシだ。お前が『未遂だから』って先生に言ったんだろう?」
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