親友

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「保健室で寝てる奴らに怒鳴り込みに行ったアホを見てたら冷静になったんだよ。お前まで謹慎になる気か」  ジトっと林を見ると、ふいっと目を逸らされた。  バツ悪そうに雨模様を睨む林の横顔を眺めながら、諏訪は昨日の午後のことを思い出す。  甘井呂に教室ではなく保健室で休めと引っ張られ、丁度そこで血相を変えた林と鉢合わせた。 「諏訪! 大丈夫なのか!? 大丈夫じゃないだろう? おい! 佐藤いるのかっ!!」  頭に血が上っているのが目に見えて分かる林が一方的に言葉を捲し立てたかと思うと、諏訪が何も返事をしない内に保健室のドアをぶち開けたのだ。  まるで道場破りでもするかのような剣幕だった。  甘井呂のおかげで落ち着いていた諏訪だったが、その怒鳴り声を聞いて更に冷静になった。  自分が怒る必要性がなくなった気さえした。  隣で手を繋いでくれていた甘井呂も真顔になるレベルだ。 「まぁなんか、佐藤も色々溜まってたんだろうなって」  諏訪は水筒に口をつけながら、一晩中考えていたことを呟く。  佐藤は諏訪に「Subなのが嫌なんだろう」と詰め寄ったが、あれは佐藤自身が思っていることだろう。  小柄で舐められやすい佐藤は、妙な相手に絡まれることも多かった。その鬱憤の矛先が諏訪に向かった理由は謎だったが、ストレスが掛かっていたのは明白だ。  林もそれは理解しているようで、二つ目のおにぎりを手にしながら頷いた。 「本人と直接話したいな」 「うん。というわけで、今から電話してくる」  諏訪はスマートフォンをポケットから取り出して振ってみせた。林は大口を開けたのを一旦閉じて、「良いのか?」と、眉を顰める。 「先生、やめとけって言ってなかったか?」 「しーらない」 「待て。俺も一緒に聞きたい」  悪戯っぽく笑って立とうとした諏訪の腕を、林が慌てて掴んできた。  心配してくれているのは分かるが、どう考えても電話に向かって怒り出しそうだ。  出来れば静かに、穏便に話したい。  慌てておにぎりを処理しようとしている林の肩を、諏訪はポンポンと叩く。 「ちゃんと報告するからさ、二人にしてくれ」  やんわりお断りすることにした。
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