部屋を出ろ

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 男子生徒が発した圧のある命令口調を聞いた諏訪は、間髪入れずスッと立ち上がる。  そのままドアに体を向けた時には、まるで自分の意思とは無関係に足が動いたかのようだった。  更にはふわりと体が軽くなった気がして、首を傾げる諏訪だが、 「特にお前」  男子生徒が指差した先を見てゲッと顔を歪める。  人差し指の先にいたのは唐渡だった。    唐渡は初対面の相手に「お前」呼ばわりされて不快げに表情を歪めた。男子生徒が一年生だと知っていたら間違いなくキレていただろう。  整った顔同士がバチっと火花を散らすのが見えて、諏訪は思わず背筋を伸ばした。    唐渡の不機嫌さは伝わっているだろうに、男子生徒は態度も口調も改めずに棘のある台詞を続ける。 「Sub dropさせといてなんも出来ねぇならSubの視界に入るな」 「なんだとお前……っ」 「唐渡」  拳を握りしめた唐渡が乱暴に一歩踏み出したが、諏訪は手で制する。そして歯を食いしばりながらも止まった唐渡を確認し、金髪の合間から覗く瞳を見つめた。 「お前、ケア出来るのか?」 「Domだからな」  諏訪は授業で習った知識を頭の引き出しから引っ張りだす。   (Sub dropしてしまったSubの体調を戻す方法で一番いいのはDomとPlay(プレイ)し、Command(コマンド)を受ける事。二番目が薬……任せた方がいいか)    保健室に行ったところで、薬を渡されるだけだ。  諏訪が部長の林に視線を向けると、全く同じ事を考えていたらしい。  二人は頷き合って、他の部員を引き連れ部室の外に出ることにした。
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