嫌か?

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嫌か?

「服脱ぎてぇー!」  諏訪はプレイルームのソファに飛び乗るように座り、服を捲ってバタバタと肌に風を送る。引き締まった腹筋は白く、日焼けした腕の黒さが際立っていた。  汗で肌着が体に張り付く。白いワイシャツも首元はぐっしょりで、もう脱いでしまいたい。  ただその分、クーラーの風が当たると冷たくなって気持ち良かった。  その様子を見ていた甘井呂は、長い前髪を掻き上げながら頷く。 「パンツだけ履いてたら俺は気にしないぞ」 「パンイチでPlayは絵面がキツすぎる……」  道中かいた汗のせいで前髪が下りず、ワイルドなオールバックになった甘井呂を見上げて諏訪は苦笑した。  今は夏休み前の試験期間。  本来ならすぐ家に帰って勉強すべき日だ。  でも実際に家に帰ったところでずっと勉強するわけではない。少なくとも諏訪と甘井呂はそういうタイプの人間だった。  せっかく早く学校が終わって部活もないのだから、 「体調が良い方が勉強も捗るし」  と、自分たちに言い訳してプレイルームにやってきたのだ。  甘井呂が元々一つ開いていたワイシャツのボタンを更に二つ開けると、チラチラ覗くだけだった銀のネックレスが全容を表す。  飾り気のないシンプルなデザインが、両耳を飾るフープピアスと共に甘井呂の綺麗な顔を引き立たせていた。 「そういやさ、甘井呂って不良っぽいのにちゃんと休まず授業にでて試験も受けてって……意外と真面目だよな」 「ファッションヤンキーだからな」 「そんな、ファッションオタクみたいに言われても」  見た目だけ派手にしている、ということなのだろうが。 (中身も不良だと思うけど……)  諏訪は内心でツッコミつつ、リュックの中を漁って青いタオルを引っ張り出す。本気でワイシャツだけでも脱いでしまおうか迷いながら、スポーツ専門店のロゴの入ったタオルで乾ききらない汗を拭っていった。  甘井呂は諏訪の隣に腰を下ろして、じっとその様子を観察してくる。 「お前も拭く?」 「汗拭きタオルの共有はどうなんだ。絶景だなと思っただけだ」 「そう言われると隠したくなる不思議……」  惜しみなく出していた腹をおずおずと隠す諏訪に、甘井呂は小さく笑った。 (なんだよ……自分だって、胸まで見えてるくせに……)  男の体なんて、どこを見ても今まで何も感じなかったのに。
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