嫌か?

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 相手が甘井呂だと少し恥ずかしかったり色っぽく見えたりして、汗の滲む白い肌から慌てて視線を外した。 「人が寄ってきにくいんだよ」 「え?」 「こういう格好してるとな」  長い指先が銀のネックレスを持ち上げた。  どうやら、派手な外見をしている理由を説明してくれているようだ。諏訪はタオルを頭に移動させて、ほんのり赤くなってしまった頬を隠す。 「寄ってきたら困るのか?」 「俺、Playしてくれって言われたら断れねぇんだよ。それで相手したSub同士が揉めたことあって」 「モテすぎるのも優しすぎるのも大変だなぁ」  嫌なことを思い出したのか遠い目をしている甘井呂の頭を、諏訪は苦笑してポンっと撫でた。  甘井呂のPlayはまるで恋人にでもするかのような雰囲気だから、勘違いするなという方が酷だろう。それもPlayに慣れていない中学生同士なら尚更だ。 (俺だって……ドキドキするし……)  諏訪は落ち着かなくなってもう拭いた顔をもう一度タオルで擦り、大人しく撫でられて目を細めている甘井呂を盗み見る。  Normalとして過ごしてきた諏訪からすれば、Playそのものも恋人以外としているのが信じられない行為だ。  甘井呂はそれを色んな相手としているのだと思うと、何故か胸の奥が痛む気がした。 「ところで」 「ふぁっ」  スルリとタオルが頬を擽り、顔から離れていってしまう。まだほてったままの顔が晒され、甘井呂の顔が近づいてくる。耳元で、低く甘い声が響いた。 「そろそろ俺もあんたを撫でたいんだけど」  甘井呂を撫でていた手が大きな手に絡め取られ、汗で冷えた指先がまた熱を持ってくる。 「いいか?」 「う、ん……」  頷いてみせると、形の良い唇が弧を描いた。  改めて言われると、いまだに緊張してしまう。  友人として他愛もない時間を過ごすのは楽しいし、いつまでも喋っていられる。でも、この場所はそれだけの場所ではない。  甘井呂に全てを曝け出す時間が始まると思うと、期待で諏訪の瞳が揺れる。 「諏訪、Sit(座って)」  脳に直接語り掛けられているような、不思議な感覚。  自分の太腿を指差しながら、甘井呂は命じている。  諏訪はギシッとソファに足を乗せ、甘井呂の膝に腰を下ろした。ソファのクッションが、グッと落ちる感覚がある。
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