嫌か?

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 諏訪は繋いだ手を引かれるまま、おぼつかない足取りで従順に歩き出した。白いシーツのベッドの前で立ち止まると、甘井呂が悩むように口元に手を当てる。 「……ロール……はまずいか……?」 「なに? もっかい、いってくれ。翔のいうこと、なんでもするから」 「あんたほんと……っRoll(寝転がって)」  見上げた先の甘井呂が、何かに耐えるように眉を寄せた。片手で顔を覆ったかと思うと、ベッドを指さしてCommandを言い直してくれる。  諏訪は命じられたままベッドに上がる。サラリと滑らかなシーツに皺を寄せながら、仰向けに寝そべった。  両手足を軽く広げた無防備な姿で甘井呂を見上げる。  甘井呂はフッと小さく息を吐いてから、諏訪の顔の両側に手をつく。そして体を跨いで覆い被さってきた。 (かお……まっかだ……)  燃えたぎるような瞳や荒い息遣いから、甘井呂もPlayが気持ちいいのだと伝わってくる。大きな手が、いつも通りに頭を撫でてくれた。 「Good boy(よく出来ました)。大輝、Touch(触って)」  目の前に指の長い手が広げられる。諏訪は熱い手をその手に触れさせ、ゆっくりと一本ずつ指を絡めていき握りしめる。  甘井呂もしっかりと握り返してくれて、互いの手の体温が一体化する。 「……これ、すきだぁ」  抱きしめるのとはまた違った繋がりが、安心させてくれる。へにゃりと笑いながら指先の力を込めたり抜いたりしていると、甘井呂の顔が近づいてきた。 「……っ?」  なんだろうと問いかけようとすると、その前に唇に柔らかいものが触れる。それは一瞬の出来事で、すぐに離れていった。  何が起こったのか分からず目を白黒させていると、眉を寄せた甘井呂が見下ろしてきていた。 「これは……嫌か?」 「もっかい」 「え……」 「いまのだけじゃ、わからない……」  諏訪は驚く甘井呂の首に腕を巻きつけ、自分から顔を近づけた。  甘井呂は何も言わず、再び諏訪に口付ける。  ただ触れるだけのそれがあまりにも心地よく、幸せで。  二人はPlayなど忘れて、時間切れまでひたすらキスを繰り返した。
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