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落ち込み掛けたところで、唐渡の身も蓋もない言葉が諏訪の澱んだ空気を打ち砕く。思わず笑ってしまいながら、砂糖の塊を口に突っ込まれたような顔をしている唐渡を見た。
「えぇー……じゃあお前はどうやってんだよ」
「ニール、ルック、カム、スタンダップなんかをこう……初めはしてるんすけど……楽しくなってくると途中から記憶が……」
「怖いって! サブスペースのDomバージョンでもあるのか?」
甘井呂とのPlayしかしたことがない諏訪は目を剥く。唐渡の言ったCommandは基本的なものばかりだが、スキンシップがあまりないのは驚きだ。
また記憶がないということは、訳の分からない内に相手をSub dropさせてしまっているということ。驚愕の事実だった。
薬を飲んでいてもそうなってしまうということは、唐渡は諏訪が思っていた以上にコントロールができないらしい。
しゃがんだままの唐渡は、項垂れて頭を抱えている。
「真面目な話、支配する側が理性飛んでちゃダメなんすよ……俺、絶対Domとして欠陥がある……Domの欠陥品……」
「ま、待て。誰もそこまで言ってないから」
唐渡の自虐はいつものことだが、珍しく本格的に落ち込んで消え入りそうな声になっていた。諏訪は床に膝をつくと、曲がった背中を撫でてどう慰めたものか考える。
いや、慰めるというよりは打開策がないものかと思考を巡らせた。
「あれ? でも試合中とかにGlare出したりとかはないよな」
スポーツ中は基本的には冷静でいなければならないが、試合の流れによっては当然気持ちは昂る。喜びや怒り、緊張、苛立ち焦り。全ての感情が忙しなく押し寄せてくるのは当然だ。
Dom性を持つ人がGlareを発してしまい、試合を中断させてしまうことも極々稀にある。
中学生や高校生など、精神が未熟であればなおさらだ。
唐渡はこんなにDom性のコントロールに苦しんでいるのに、試合中は一度もトラブルを起こしたことがない。
「一発退場じゃないっすか。そんなミスしません」
曇りなきまなこだ。
Sub dropも一発退場レベルの大事だとつっこみたかったが、気持ちは分からなくはないので諏訪は黙った。
『命とサッカーどっちが大事なんだよ』
と説教する、甘井呂の幻覚が見える。
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