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欲求発散のためのPlay中と、単純に感情の起伏でGlareを発してしまう可能性があるだけの試合中とでは状況が全く違う。とはいえ、全くコントロールができないというわけではなさそうだ。
「きっとさ、お前は本当に大事な時はちゃんとコントロールできるんだよ」
「大事か……例えば好きな相手なら大事だから……」
「うんうん、そういうこと! きっと好きな相手なら大丈夫!」
強く頷きながらバシバシと背中を叩くと、唐渡はじっと見つめてくる。元々目力の強い唐渡が間近に顔を寄せてきて、諏訪は思わず体を引いた。
「じゃあ、副部長。俺とPlayしてください」
唐渡が意を決したように息を吸った後、告げてきた言葉は諏訪に混乱をもたらした。
「…………な、なんで俺?」
「今の話の流れで『なんで』は酷くないっすか」
「だ、だって……え?」
「俺、一年の時から副部長が好きです。Subだって、分かる前からずっと」
日焼けした整った顔が真っ赤に染まっている。
諏訪も、顔が熱いし心臓が痛いほど鳴っている。
嘘だろ、と口走りそうになるのを飲み込んでなんと答えようかと頭を働かせた。
唐渡は、ジリジリと距離をとっていく諏訪の手をギュッと掴んだ。
「一回だけでもいいんです。プレイだけでもしてもらえませんか? 絶対にSub dropさせませんから」
一瞬だけ。
縋るような瞳に情が湧く。
でも。
「……っ、それは出来ない」
諏訪はすぐにはっきりと答えることができた。
唐渡の顔はくしゃりと歪むが、それでも口元は笑みを保っていて胸が軋む。諏訪の手を握る手から力が抜け、ふらりとスポーツバッグの上に戻っていった。
「やっぱ、信用ないっすよね」
「違くて……」
Playは恋人としかしないわけではない。現に、諏訪と甘井呂とは友人関係だ。
健康を害さない為に、仕方なく誰かとPlayする人もいるだろう。
それでも諏訪は甘井呂としかしたいと思わないし、その理由も薄々気づいている。
「お前が俺のこと好きなら、させられない」
心を昂らせ満たされる行為を、好きな相手としたいと思うのは当然だ。でも、相手が自分を好きでなかったとしたら。
ただひたすらに、虚しい行為になってしまう。
勇気を出して告白してくれた相手の気持ちを踏みにじってしまう。
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