めでたしめでたし

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 Subだと分かった時、急に暗闇の中に閉じ込められたような不安でいっぱいだった。右も左も分からなくて、上手く受け入れることもできなくて。  でも、甘井呂が手を引っ張って導いてくれた。  全てを包み込む優しさに救われた。 「Playしたいって思ったのは、翔だけだ」  DomとSubのPlayと聞けば、一方的でどこか怖いイメージが漠然とある。でもそうではなく、温かい行為なのだと教えてくれた。 「翔じゃなかったら、初めてのPlayも躊躇したと思う」  諏訪は朱がさしている甘井呂の柔らかい頬にそっと触れる。 「だから、あの時見つけてくれてありがとう」 「ほんと、かわいいよな」  二人は微笑みあってまた口付けを交わす。  小鳥が戯れ合うようにリップ音を鳴らしてから、諏訪は照れ臭くなってへらりと笑った。 「かわいいは、むずむずする」 「じゃあ、愛しい」 「なかなか使わない言葉だな」  年齢に似合わない甘井呂の言葉に小さく吹き出してしまう。それでも、言葉が嘘ではないことは目の前の甘い微笑みが教えてくれている。  諏訪は甘井呂の体から降りると、ベッドに座って腕を広げた。 「好きだよ、翔」 「俺も好きだ、大輝」  甘井呂は体を起こし、勢いよく諏訪を抱きすくめる。  この上なく幸せで、諏訪の頭は甘井呂のことだけでいっぱいになった。 「次、何して欲しいかSay(言って)」 「もっといっぱい、Commandください」 「Good boy(もちろんだ)」    スマートフォンに揺れるバスケットボールの飾りが首のCallarに変わるのは、二人が大人になってから。    おしまい
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