(これがサッカーの的当てとかだったら俺もムキになったもんな。気持ちはわかるぞ)
にこにこと温かい気持ちで諏訪が見守っているとは知らない甘井呂は、次々と景品を倒していった。
諏訪は的中のたびに大はしゃぎして、通りがかりに足を止める人たちもいる。
その人たちの中に偶然、見慣れた姿を見つけた。
タイミングがいいのか悪いのか……友人と来ているらしい唐渡だ。
景品のお菓子を持って上機嫌の諏訪は、彼に声をかける。唐渡も、もちろんにこやかに返事をしてくれた。
でも、それがいけなかった。
会話をしているうちに、唐渡は悪気のない顔で爆弾を落としたのである。
「副部長、今年は浴衣なんっすね! 似合ってます!」
諏訪はゲゲッと声を出しそうになった。
射的の弾を撃ち終えて、諏訪の隣で唐渡を牽制していた甘井呂は、全ての動きをピタリと止める。
明らかに顔色が変わった諏訪の、頭の天辺からつま先までを、甘井呂の視線が舐めていく。
「あんた、いつも祭りには浴衣って言ってなかったか」
「えと……その……」
上手く答えられなくてモゴモゴしていると、甘井呂が形の良い唇の片端を上げた。
きっと、嘘がバレたのだ。
ブワッと顔に熱が昇る。
照れくさくて、いてもたってもいられなくなった諏訪は、甘井呂と唐渡を置いて地面を蹴った。
甘井呂がすぐに追いかけてくる気配を感じ、屋台に並ぶ人混みに紛れ、人を掻き分けながら進む。
白地に黒い縦縞模様の浴衣の裾と袖が閃き、履き慣れない草履で擦るように地面を踏み締めた。
(嘘なんかつかなきゃよかったー!)
別に悪いことでもなんでもなかったのに。
早い段階で正直に浴衣なんて普段着ないことを伝えていれば、恥ずかしいこともなにもなかったのに。
頭の中は後悔でいっぱいだ。
人と人の間をすり抜けて必死で逃げた諏訪は、屋台が並ぶ通りを突破した。賑わう公園から離れれば、人がまばらになっていく。
走りやすくなると、当然、スニーカーを履いている甘井呂はすぐに追いついてきた。
諏訪は慌てて、近くに見えた神社の長い階段を駆け上がる。
脚力では負けはしないはずの諏訪だが、やはり草履ではスピードが上がらない。
階段の途中で、逞しい腕にしっかりと後ろから抱きしめられた。
こうなると、階段で暴れるわけにはいかなくて大人しくするしかない。
走ったのと、暑いのと、恥ずかしいのと。
すべての条件が重なって、諏訪の心臓は和太鼓より大きく鳴っている。
火照る頬に、甘井呂の荒い息が当たる。
「あんた、草履のくせに足早すぎ……、なんで逃げた?」
額から流れてくる汗に構わず、ピッタリと体を密着させてくる。背中から甘井呂の心音も感じて、諏訪は観念した。
「う、嘘がバレちまったと思って……」
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