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都市部から離れた郊外にある、寂れた倉庫街で。
その中でも、とりわけ薄汚れたひとつの倉庫の中に、3名の少女が捕らわれの身になっていた。
まだ10代半ばくらいと思われる少女たちは、両手を背中側に縛られ。倉庫の隅にしゃがみこむようにして、泣きじゃくっている。すると。
「うるせぇ、静かにしやがれ! ぴぃぴぃ泣くんじゃねえよ!」
鼻と口元を覆うタオルを巻き、サングラスをかけて人相を隠し。両手でマシンガンを持った、いかにも「犯罪組織の実行犯」といった男が、少女たちに怒鳴り散らした。しかしこの男はまだ若く、組織の中でも下っ端なのだろう。そうやって怒鳴ることで、かえって逆効果になることをわかっていなかった。
「ひい、ひいぃぃぃぃ!」
「わあん、わぁぁぁぁん!!」
その怒気に満ちた声に驚き怯え、少女たちの泣き声は更に甲高いものになったのだ。だが、先輩たちから見張り番を押しつけられた、この経験不足な若い下っ端は。それが自分に逆らっている様子、つまり「自分をナメている」ようにしか思えなかった。
「うるせぇってんだよ! いつまでもそうやって泣いてやがると、こいつをぶっぱなすぞ?!」
下っ端男は苛立ったように、少女たちにマシンガンの先を向けた。どう考えてもこれまた逆効果にしかならないのではと思われたが、明らかにこの男は冷静さを欠いていた。だからこそ、組織の先輩たちが倉庫内で休憩しているこの時間帯に見張り番を押しつけられたのだろうし、こんな役目しか回ってこないのだろうが。しかし、冷静さを欠いていたことはこの男の、いや組織全体の命取りになった。
マシンガンを向けられ、更に甲高い悲鳴を上げていた少女たちの声が、「ピタリ」と止んだ。下っ端男は、自分の強引な説教が功を奏したのかと思ったが、そうではなかった。少女たちの視線はみな、下っ端男の「背後」を見つめていたのだ。
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