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京浜東北線の電車で10分ほど。
関内駅のホームに降り立つ。
「おぉ……」
流れ出す発車メロディーに、興奮気味の剛史。贔屓チームの球団歌らしい。
南口改札を抜け、外へ出ると、右手にスタジアムのスタンドが、もう近くに見えた。
「すごーい!」
初めて見る光景に、野球に興味がない佳代ですらテンションが上がる。
スタジアム前の大きな交差点を渡った所で、突然、
「佳代!」
女性の大きな声に呼ばれた。
びっくりして声のした方を見る。と、左前方にある大きな木の下で、一人の女性が佳代に向けて手を振っている。
その姿に佳代は驚いて、一瞬息を飲んでから、
「お母さん!」
と、剛史を置いて駆け寄り、
「えーっ、なんで?」
佳代と同じく、野球には興味のないはずの母が、ユニフォームまで着て笑っている。
「ごめん、黙ってて」
後から追いかけてきた剛史が言うと、母も、
「佳代を驚かせたいからって、剛史さんにお願いされてね」
「今月、お母さんの誕生日があるだろ?」
剛史が言った。
以前、剛史を実家に連れて行き、母に紹介したことがある。そこで、占いの話になったのだが、その時のことを、彼は覚えていてくれたのだ。
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