ブラックジョークにしちゃダメな話

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俺の人生には、いつだって「黒」が染みついていた。 学生時代。 甲子園の常連だった。 有名な高校。 近くにはいつも日焼けで真っ黒になった仲間たち。 今年も順調に甲子園への切符を手に入れた。 選手宣誓。 俺が代表で選ばれた。 ちゃんと頭には代表の言葉を叩きこんだ当日。 黒い衝動。悪魔のささやき。気の迷い。 当時俺がハマっていた迷惑系動画配信者が頭をよぎった。 気が付いたら俺の脳内に言うはずだった言葉は消えていた。 「どーもーwwwwww 今回の甲子園もwwwwww 俺たちが絶対に優勝しますwwwwwww 周りの奴らは全員ざぁこざぁこ♡wwwwwwwwwww 記録にも記憶にも残る試合しまーすwwwwwwwww」 たった数秒。 この数秒で、俺の人生は変わった。 目を白黒させる監督。 仲間たちの冷ややかな目。 周りからの笑い声。 拡散されていく動画たち。 向けられたカメラの数々。 出来心だったんだ。 本当だ。信じて欲しい。 いつも通りのつまらない宣誓じゃ、 記憶に残らないと思った。 あの配信者だって言っていた。 悪名は無名に勝るって。 俺はあいつらの頑張りを無駄にしてでも、 自分が多くの人間の記憶に残ることを選んだ最低野郎だ。 結果。 俺たちは1回戦すらも出させてもらえなかった。 本当に優勝するつもりだったのに、 ただのビックマウスになってしまったのが残念。 学校からは酷くお叱りを受けた。 自主退学も進められたのは流石に想定外だった。 気が付いたらテレビデビューもしている。 母は泣き崩れた。 父は新しい場所に引っ越そうとお金を借りようとしたが、 銀行など公的な機関だけでは難しく色々な所からお金を借りたらしい。 しかし、返せる宛てもなく後にブラックリストに登録された。 それを知った俺は、もうまともな人生を送れないかもしれないと ようやく悟った。 一瞬で人生は真っ黒となった。 面白い位に一瞬だった。
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