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「結局あの子はいっちまったのかい?」
「ああ、あっちからお迎えがきたみたいで」
顎を撫でながら誰かがそう言う。
「あの子ここにきてまだ数年だからねぇ」
「いやぁ、僕はてっきりずっとここにいてくれるかと」
「何言ってんのさ、此処は生死を彷徨ってる人達ばっかりなんだから。あたし達だってきっともうすぐくるのさ、白馬の王子様が!」
「うちはもう間に合ってるけどねぇ?」
「ほらそんな事簡単に言っちゃって」
そういうと、周りの皆んなは一斉に笑い出す。
手、顔、体あらゆるところに刻まれた皺がくしゃっと歪んでいる。
「あれでもあの子、なかなか綺麗な顔立ちしてるからねぇ。貰ってくれるやつもいっぱいいるんだろね」
1番歴のあるお婆さんがため息混じりに小さく呟いた。誰にも聞こえない様言ったつもりなのか、直後切り替えて「あんた達、家賃回収もうすぐだからね」と皆に怒鳴っていた。
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