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おばけさんが村の中へと消えていってから5分ほど経っただろうか。私はその間1人で村の入り口に待たされていた。
ひとりぼっちという状況が久しぶりだったからか、時間がとても長く感じる。
ここからどうするんだろう、知り合いでもいるのか?そもそも迎えに来たと言っていたのだから何かしらすべきことがあったのだろう、と空からぶら下がる紐をなんとなく引っ張りながら考えていた所、ようやくおばけさんがのそのそとやってきた。
「すまん、待たせた」
おばけさんの手が私の腕を掴み、ズンズンと奥へと連れて行かれる。その勢いとは裏腹に握る手がすぐ解けてしまいそうなほどの弱い力で、私はなんとなく強く握り返した。
「さあ、ひとまずここへ入ってくれ」
ようやく案内された場所は、他の家とは少し変わった家だった。厳かな雰囲気があたりに広がり、賑やかしい街全体の様子と相反している。
おまけに扉は鉄製で南京錠までつけてあるのに対し、外壁はボロボロの木で出来ていた。なんともアンバランスな、とか考えていると「早くはいれ」と急かされていた事に気づき、私はただ困惑した。
「入れといわれても、見るからに鍵が沢山かかっているじゃないか。おば...君が開けてくれ」
「...本当に忘れたのか?」
おばけさんは何かを呟くと、扉に向かってまたズンズンと歩み出す。彼のおでこが鉄の扉に派手な勢いでぶつかりそうになった時、
鉄の扉は細かい糸となり、シャランと音を立てて大きく靡いただけだった。どうやら、鉄の扉や南京錠などは見かけだけのようだったらしい。おばけさんの後を急いで通ると、よく見ないと見えない程細く長い綺麗な糸の集まりが、顔のそこら中をかすめ、私は思わずくしゃみしそうになった。
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