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クロムが玄関に向かおうとしたその時、背中に激痛が走り、盛大に廊下に転がった。痛みと衝撃に頭がついていかない。
今、飛び蹴りされた、のか?!
「いって! な、にっ?!」
「ごきげんよう、コソ泥さん。思惑通り動いてくれて、嬉しいよ」
俺の背中に跨り、両手を背中に捻り上げた男が笑う。身体をよじっても、びくともしない。昨日、簡単に押し倒されていた、か弱い男はどこ行った。
「あ、あゆ、み?」
「結婚詐欺6件、窃盗15件。何度も整形して顔を変えているけど、詰めが甘いなぁ。耳の形も別物にしないとダメだよ。耳はその人固有のものだから、特定しやすいんだ」
「へ? な、んの、話をしてるっ」
「昨日お前から採取した体液のDNA鑑定結果と、この家に仕掛けられた30個の監視カメラの映像が証拠だ。言い逃れは出来ねぇからな」
あまりにも突然のことで理解が追いつかない。
待ってくれ、待って!! 待ってくれよ!!
「お、お前っ! 本当に俺の知ってるあゆみなのか?!」
「愛し合った仲なのに疑うのかよ。ほーら、ちゃんとした警察手帳見せてあげるね?」
あゆみはスーツの懐から、ドラマなどでよく見る物体を取り出した。慣れた手つきでパカリと披露される。
「ほ、ほほ、本物?!」
「そう、本物の刑事」
「株で儲けたって」
「嘘。お前を油断させる為の小芝居」
「時計はちゃんとあったぞ!」
「ここは後輩の赤城の家。あいつ実家が金持ちだから、そういうのしこたま持ってんの」
「睡眠薬を盛ったはずだ!」
「うん、飲んだけど、まあ、俺訓練受けてるし効かないよね」
「そっ、そんな!」
「本当に偶然会えて良かったし、お前が単純な男で良かったぁ。最後に、好きな男とベッドを共に出来て幸せだったよ。監獄にも毎日会いに行ってあげるね? 今度はずっと一緒だよ」
「そ、それが、好きな相手にする仕打ち?」
「大好きだよ、クロム。だから、お前の罪は絶対許さない」
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