黒夢

1/6

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「あゆみの黒髪はキレイだよ」  昔、焦がれるほどに好きだった人が、俺の黒髪を褒めてくれた。当時、東洋人というだけで差別の対象にされていた俺にとって、彼の言葉は救いだった。  彼の一番になりたかった。  彼の視界に映っていたかった。  彼にも俺を好きになってもらいたかった。 けれど、彼は俺のものにはならなかった。彼は誰にでも優しくて、積極的な女性たちに言い寄られて、断れなくて、付き合っていた。  だから、俺は友だちで良い。 あなたの唇は奪えないけれど、一番そばにいられる。 それでも、また親の仕事の都合で日本に帰ることになり、彼とも縁が切れてしまった。 手紙送るね。 電話するね。 必ずまた会おうね。 世迷言を。 もう会えないのにねぇ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加