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「あゆみの黒髪はキレイだよ」
昔、焦がれるほどに好きだった人が、俺の黒髪を褒めてくれた。当時、東洋人というだけで差別の対象にされていた俺にとって、彼の言葉は救いだった。
彼の一番になりたかった。
彼の視界に映っていたかった。
彼にも俺を好きになってもらいたかった。
けれど、彼は俺のものにはならなかった。彼は誰にでも優しくて、積極的な女性たちに言い寄られて、断れなくて、付き合っていた。
だから、俺は友だちで良い。
あなたの唇は奪えないけれど、一番そばにいられる。
それでも、また親の仕事の都合で日本に帰ることになり、彼とも縁が切れてしまった。
手紙送るね。
電話するね。
必ずまた会おうね。
世迷言を。
もう会えないのにねぇ。
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