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「悪い、見苦しいとこを見せた」
「う、ううん! それだけ自分のパフォーマンスに誇りを持ってるんだよね、依織は。部室部外者立ち入り禁止は良いと思う!」
「ああ」
私も部室行ってみたいなって一瞬思っちゃったけど。
「依織ー、いつの間に東城さんと仲良しになってんだよー? 女が苦手な依織が」
やっぱり女の子苦手なんだ!
「ふ、文香は良いんだよ」
「へぇ? 名前呼びする女子も何気初じゃない?」
そうなんだ!?
「も、もしかして私、無理に呼ばせてる?」
「い、いや。俺が呼びたいから呼んで……あっ」
「そっか、良かった!」
依織に名前を呼ばれると、嬉しくて嬉しくて天にも舞い上がるような気持ちになる。
色々な人に名前で呼ばれているのに。
「依織ー! 土曜日の合コンさ、人数足りないから付き合ってよ」
違うクラスの男子がやって来て依織に頼む。確かバンドでリードギターやってた人だ。
「絶対行かない」
「えー! 皆、依織に会いたがってるのに」
「俺はそういうの興味ないって言ってるだろ」
「一回ぐらい良いじゃん!」
「まもるん、諦めなー? 依織は気になる子がいるんだって」
「おい、愁!!」
気になる子がいるという彼の親友の白石くんの発言に私は胸を痛める。
「文香ー、お弁当食べないの?」
「あっ、うん。食欲無くて」
依織に気になる人がいるって聞いてから私はずっと上の空。
食欲すら湧かない。
昼休み、一口もお弁当に手をつけない私を友人が心配する。
「大丈夫?」
「う、うん!」
気になる人って誰なんだろう?
ライブに来るファンとか? たくさんいたけど….…。
ずっと気になって気になって、友人の話も頭に入ってこなくて、その後も結局何も食べずに1日過ごした。
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ねぇねぇ 君に恋して良いですか
僕が世界一 君を愛しますから
ねぇねぇ 君を名前で呼びたいな
君の名前が 世界一愛しいから
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放課後、依織の曲を聴きながら、私は机に突っ伏す。
この曲はやたらリアルだ。まるで私の気持ちを代弁したかのよう。
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