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「この曲は私自身……」
「何聴いてるんだ?」
「い、依織!」
依織が私の前の席に座り、話しかけてきた。
「君に恋して良いですかを聴いてたの」
「そ、そうか」
「依織は? 部活無いの?」
「ああ。今日はメンバー皆予定があって。俺だけこれから個人練習。家でだけど」
「そ、そっか」
「そうだ、これやるよ」
「えっ?」
依織に突然、あんぱんを渡された。
「何も食わないと倒れる。これならそんな大きくもないし、食べやすい」
「どうして……」
「文香がお弁当残してたの見てたから」
「私の事見てたの?」
「あ、えっと……話しかけるタイミングをはかってただけで」
「そんな、いつでも話しかけてきてくれて良いんだよ?」
「でも……」
「は、話したい! 依織とたくさん。私も話しかけるから……」
積極的すぎるかな?
けど、私は……。
「じゃあ、遠慮なく話しかけるよ。まだ、緊張するけど」
「うん!」
「ほら、あんぱん食え」
「う、うん。あんぱん……依織はこしあんが好きなんだね?」
「ああ。文香は?」
「私もそう。一緒の所見つけられて嬉しいな」
「そ、そうだな」
「ん……美味しい。ありがとう、依織」
私はあんぱんを頬張る。
「良かった。ずっと心配だったんだ。どっか悪いのかなって」
「ご、ごめん。ちょっと気になる事があってもやもやしてただけで」
「気になる事?」
「た、大した事じゃないんだけどね」
「俺で良ければ……話聞く。頼りない….…かもしれないけど」
「ありがとう。けど、大丈夫!」
優しい人なんだなぁ。
やっぱり私、この人が好きだ。
「良かった」
「あ、あの……い、一緒に帰っても良い?」
「えっ?」
私は勇気を出して誘う。
「も、もうちょっと話していたくて」
「構わないけど」
もっとたくさん話して知ってみたい、依織の事。
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