音楽だけが恋人なはずだった。(EPISODE 依織)

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2曲目が終わると、MCに入る。 「メンバー紹介します!ベース、愁ー!」 愁は紹介されると、かっこつけてベースをかき鳴らす。 「リードギター、マモー!」 「こんばんはー! 皆、楽しんでるー?」 「ドラム、アッキー!」 アキラはドラムを勢い良く叩く。 「そして、我らがリーダー! ギターボーカル・依織ー!」 「よろしくお願いします。以上4人でお送りしてます」 「ちなみに影のリーダーは俺ね」 「おい、ふざけんなよ? 愁! じゃんけんで決めただろう、ちゃんと。俺がリーダーって」 「でも、ファンの皆も真のリーダーは俺だと思ってるっしょ。俺がリーダーだと思う人ー?」 愁が呼びかけると、ライブの観客大多数と俺以外のメンバー皆が手を挙げる。 「待て待て待て! 観客は百歩譲って分かる。愁ファン多いし。けど、何でお前らまで手を挙げる?」 「じゃんけんで決まったから仕方なかったしー! なぁ、愁、アッキー?」 「うむ。ギターボーカルは大抵リーダーだからな。リーダーじゃないとなんか可哀想だ、依織が」 「待て、この先リーダーとしてどうお前らに接したら良いわけ? 俺」 「仕方がないよ。バンドを立ち上げたのは俺だから。自然とアキラとまもるんを使役しちゃってるんだな、俺」 「バンド名決めたのは俺だけど!? あと、今日のライブセッティングしたのも俺だから! リーダー扱いしやがれ」 俺と愁の掛け合いに皆が笑う。あっ、東城さんも笑ってる。 さっき愁がリーダーに相応しいと思うかって質問で東城さんは手を挙げてなかったな。優しいな。 MCを何回か挟みながら無事10曲を演奏し切った。 「あれー? 依織はー?」 「まーた消えた」 ライブが終わると、確実にファンが一気に押し寄せる事は明確だった為、俺は楽屋の窓からこっそりとギターを抱えながら逃走。 あいつらにはメールすれば良いし。
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