君に想いを届けたい

3/3

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「ちょっと待ってください」 想司が頬を赤らめて言葉を遮った。 まさか、もうあたしを振るの? 早すぎだよ…。 後ろ手に持っているチョコレートが虚しい。 「先に俺から言わせてください。 俺、美空先輩のことずっと好きでした」 想司が優しく微笑む。 え? 嘘…想司も同じ気持ちだったの…? 「先輩も同じ気持ちなんですよね。 前から知ってました。だって先輩 分かりやすすぎるんですもん。まじウケる」 「おい、まじウケるはいらないだろ」 「冗談ですよ。次は先輩の番です。 俺に届けたい気持ち、渡してください」 ずるいよ、想司。 なんでいつもより優しいのよ。 あたしは後ろ手に持っていた チョコレートを想司に渡した。 「あたしも、想司のことが好き…。 転校しちゃうって知ってから、ずっとこの気持ち 伝えなきゃって思ってた。あんたが 遠くに行っちゃう前に……っ 想司、転校しないでぇっ……。」 涙が次から次へと溢れでた。 想司がいなくなった学校なんてつまんないよ。 どうして、転校しちゃうのよ。 「……ごめんなさい、先輩。 転校するっていうのは嘘です」 あたしの涙を指で拭いながら想司が言う。 「は?」 思いがけない言葉にあたしは目を見開いた。 「だって、こうでもしないと 先輩、告白してくれないじゃないですか。 だから花乃先輩と協力して先輩を告らせるために 動いてたんです。いやぁまんまと引っかかって 良かったですよ」 悪魔の笑みを浮かべる想司。 まさか花乃も協力してたなんて……。 「この、鬼畜野郎がぁっ!!」 「あはは。すみません。 でも、これからも一緒にいられますよ?」 ニヤリと笑う想司に怒りが込み上げる。 けど、そっか、想司と これからも一緒にいられるのか。 「良かった…」 ホッとしてそんな言葉が漏れた。 「ん?よく聞こえなかったなぁ〜?」 「う、うるさい!あんたには関係ないから!」 ぷいっとそっぽを向くと想司はおかしそうに笑って あたしの手を握った。 「せっかくなんでそのままデートに行きますか」 想司が愛おしそうにあたしを見つめたので 微笑み返した。 これからも、この愛おしい日々が ずっと続くんだろうな。 「うん、美味しい」 想司がチョコレートを一粒口に入れ笑った。 「あたしの想い、届いた?」 「ちゃんと届きましたよ。 ありがとうございます。美空さん」 あたしは想司の大きな手をギュッと握ったのだった。 (終わり)
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加