意地悪な後輩とツンデレな先輩

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「で、何すか先輩。話って」 あたしは屋上に想司を呼び出していた。 空があたしを応援するように真っ青に色づいている。 大丈夫、今日なら言える。 屋上から住宅街に視線を落として口を開く。 「あ、あのね、想司、前から思ってたんだけどね」 その先の言葉が喉につかえて出てこない。 もし、この想いを言葉に出して気まずくなったら? 振られてしまったら? 「大丈夫ですか?先輩。 顔色悪いですよ。もしかして生理ですか?」 「このデリカシーなし野郎がぁっ!」 私は想司に腹パンする。 女性になんてことを言うんだ。 「いってぇっ、心配しただけなのに 殴られたっ!パワハラです!」 「あんたがセクハラしたからでしょうが!」 はっ、ついいつもみたいな雰囲気になってしまった。 今日はこいつに告る日なのに。 「ご、ごめん、想司。 伝えたいのはそのことじゃなくって… あの、好き、だから」 「好き?」 想司は頭の上にハテナを浮かべる。 「〜〜〜だから、あんたのことが」 「ベタなシチュエーションですね。 まさか、告白するつもりですか?」 ニヤリと意地悪な笑みを浮かべる想司。 その言葉に胸がドキンとなる。 「そ、そ、そ、そんなわけないじゃない!! あんたのことなんか1ミリも好きじゃないわよっ! バッカじゃないのっ!!」 思わず声を荒げてしまった。 違うの、と言おうとして寂しげな表情の 想司に言葉が詰まった。 「僕は、先輩のこと結構好きですよ」 「…え?」 それってもしかして。いやいやまさか。 顔が熱くなるのを感じる。 「アハハッ!先輩赤くなってますよ? もしかして期待しました?」 イラッ。 少しでも期待したあたしがバカだった。 「あんたなんか、全然 好きなんかじゃないんだからぁっ!!」 広い空にあたしの大声が 吸い込まれていったのだった。
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