意地悪な後輩とツンデレな先輩

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意地悪な後輩とツンデレな先輩

来年の2月。 アイツはこの学校からいなくなる。 あたしは窓の外を見つめた。 清々しいほど晴れた青空を真っ白な雲が流れていく。 この学校に古くからある大木がいきいきと 緑の葉を風に揺らした。 夏の日差しが照りつけてあたしの肌に汗を滲ませる。 だから、あたしはその日までに どうしてもこの想いを伝えたいんだ。 「おい、夏川。よそ見をするな」 担任の山田先生がチョークを片手に振り向いていた。 「あ、ごめんなさいっ」 あたしはすぐに黒板の半分を占めている白い文章を ノートに書き写した。 友人達がクスクス笑う。 いつものことだ。 「美空(みそら)ってば また、萩本くんのこと考えてたでしょ」 友人の花乃(かの)がニマニマしている。 「そっ、そんなんじゃないしっ!」 「またいつものツンデレかっ 萩本くん、12月に転校しちゃうんだよね。 ようやく想いを伝える決心がついたんだから 今度はヒヨらずに告りなよ?」 そうだ、あたしの後輩、萩本想司(そうし)は 5ヶ月後に転校してしまう。 両親の仕事の都合らしい。 だから、あたしはその前に想司に好きって伝えたい。 いつも意地悪なアイツだけど、 垣間見える優しさに 惹かれた。 さりげなく助けてくれて、それを指摘されて 照れてるところを見てはじめて可愛いと思ったの。 だけど、いつも素直になれなくて。 告白しようと思っても踏ん切りがつかなくて。 離れ離れなんかになったらあたしは 絶対に想いを伝えることができない。 だからあたしは、この5ヶ月間の間に 告白することを決意したのだ。
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