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五島も流石に言葉を失っていた。間髪入れずに九路は憎い背中にアイスピックを突き刺す。
「あああああああああ」
絶叫がこだました。そのままの勢いで何度も何度も突き刺した。
「やめろやめろやめろ」
もぞもぞ動きながらそう五島は叫ぶことしか出来ない。始めは興奮して夢中のままにアイスピックを振るっていた九路だったが、背中を刺す感触と、滲んでくる血に気分が悪くなり、おえっとえずいてしまった。
九路は荒い息を一生懸命整えていた。めまいまでして、耳がキーンと遠くなるが、昔の憎さを思い出して、五島の目に狙いを定める。
目を瞑って、一気に力を込めた。すると一層大きな絶叫を上げて五島は全身を痙攣させ始めた。
暗いので九路にはよく分からなかったが、目からは透明な汁と血液が混じった液体が流れ始めてきている。
「もうやめてくれ」
五島は心からそう言ったが、九路は金属バットで頬を殴った。
「死ね」
それが、五島への最後の九路の言葉だ。
大きなナイフを握った九路は、五島に狙いを定めた。
振り下ろした刃は五島の背中、肺のあたりを中心に体を貫き、風穴を作る。
五島は声を出す事が出来なくなった。まだ命はあるが、助からないだろう。
フーフーと九路は興奮しながら、次の獲物の猿ぐつわを外す。
「許してくれ、許してください」
獲物が開口一番に言ったのはそんな言葉だった。
「二九田くん、久しぶりだね」
九路はわざとらしい笑顔を作って言う。
「本当に悪かった、申し訳なかった。許してください」
そんな命乞いを見て、九路は話を続ける。
「ダメだ、許さない」
「お、俺は今、子供が居るんだ。俺が死んだら子供が」
そこまで言いかけた所で九路は顔面に金属バットをフルスイングした。
「ふざけるな、そんな子供をイジメていたのは誰だ。悪魔の癖して人の真似事をするな」
九路は怒声を浴びせ、続けて言う。
「本当に申し訳ないと思うなら、悪人のままで居続けろ、俺に気持ちよく復讐をさせろ」
金属バットで滅多打ちにする度に「がぐえ」「ぐへ」っと声にならない声が漏れる。
「君によくボールをぶつけられたこと、俺は忘れてないよ。君にはボールになってもらう」
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